株式会社佐藤塗工

左：取締役副社長　佐藤康平さん　右：代表取締役　佐藤佳郁さん

労働環境の改善や子育て支援の充実に取り組むきっかけを教えてください

佐藤佳：建設業界における３Ｋ（きつい・汚い・危険）というイメージや時代背景から、現在は若年労働者不足により技能者の高齢化が進んでいます。人材不足の中、会社が利益を生み出していくために良い人材を集めることが大切なため、労働環境の改善に取り組み始めました。また2017年に大分県おおいた子育て応援団（しごと子育てサポート企業）の認証を受けたことを機に、更に仕事を家庭の両立も積極的に支援しています。

会社の利益だけを考えたら、自社職人は抱えず下請けに仕事を出すのが一番ですが、弊社は職人の技能力に誇りを持ち、全国レベルでも引けを取らないトップクラスの技能をもっています。技能力を維持していくためにも、社員である職人や営業マンの労働環境の改善に努め、会社に対する満足度を高めることが大切だと考えています。

労働環境改善のための支援や、仕事と家庭の両立のためにどのような取り組みをされていますか？

佐藤佳：まずは賃金を上げることで会社の利益を社員に還元することから始め、休暇の増加や労働時間の減少など福利厚生の充実を図りました。

また有給休暇に関しても、職人の消化率は100％となっています。営業部門を含めた会社全体としては約60％ですが、有給休暇は家族とプライベートのために有意義に使ってほしいと話しているので、必要な時に気兼ねなく利用することができる職場環境づくりを心がけています。

佐藤康：育児休暇に関しては、女性の職人が先日初めて取得しました。弊社は男性職員がほとんどであり、彼女が社員として初の育児休暇取得者です。産後復帰する際も、本人とヒアリングを重ね時短勤務とし、子育て中の急な予定変更に合わせられるよう職場も職人から営業職へと変更しました。

職人希望で入社してきた彼女にとって、最初は戸惑うことも多くあったと思いますが、これまでの職人の経験をもとに色んな現場を一緒に回り、見積りの練習など学ぶ期間を余裕をもって設けました。

私達にとっても、初めての女性営業マンとして女性らしい細やかな気遣いや女性ならではの視点などこれまでない気づきを得ることができ、お互いに学び深い経験になったと感じています。私自身まだ幼い子どもを育てる身として、男女問わず社員に寄り添い子育てや育児休暇取得の支援していきたいと思います。

取り組み後の社内の変化を教えてください

佐藤佳：労働環境の整備はもちろんですが、社員の仕事に対する意識付けのため定期的な会議を行ない、上から指示を出すだけのトップダウンにならないように社員全員から意見を出し合うようにしています。

社員から出た意見でみんなのためになると思うことは早めに改善に取り組む事を心がけています。社員も自分の意見が採用されることにより改善の結果を休みや給料へと反映されるため離職率が低下し、多くの職人や営業マンそれぞれが最高のパフォーマンスで頑張ってくれていると感じています。

全社員研修は家族と個人と会社の3Kを大切にするというテーマで開催しました。会社を経営するに当たって大切なのは会社の利益だけではなく、社員とその家族がセットで幸せにならなければ意味がないと思っています。夢や目標がなければ人は前進していくことはできないと考えているので、研修内にそれぞれが今後の仕事やプライベートに関する短長期的な目標を立てました。また研修は就業時間内に行うこととしています。

今後更に取り組みたいことを教えてください

佐藤佳：今後も育児を始め介護などさまざまな家庭の事情を抱えた社員でも働けるよう、法律に関する知識をより充実させていきたいと考えています。

この20年の間に労働環境の改善に取り組み始め、社員のために体制を整え塗装業界では考えられないことにチャレンジしてきました。その中で数年前には会社創立以来最高益を達成しています。今後も社員のワークライフバランスの向上によって会社の更なる業績に繋がるかの検証を続けていきたいですね。

また弊社には塗装技能の証である勲章や受賞を受けた社員が数多く在籍しています。社員の能力やモチベーションの向上のためにも受賞式への参加を促し、交通宿泊費からその他経費まで全て会社が負担しています。更に日本塗装工業界が開催する全国建築塗装技能競技大会も同じように支援しています。本人にとってももちろん自信になりますが、勲章や受賞は家族も大いに喜ぶものです。今後も継続してこのような機会を大切にしたいと考えています。